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事業スピードを落とさない攻めの情シス。400人のアカウント引越しを叶え今、目指すこと

STORES の情報システム担当(以下、情シス)として、社内ITツールやシステム環境を作り上げる中野達也さん。社名変更に伴いおよそ400人のアカウントの引越しから社内イベントの配信対応など、さまざまなプロジェクトを成功させてきました。その背景には、どのような努力や工夫があるのでしょうか。お話を聞きました。

PROFILE
中野達也さん・・・PX部門/IT本部

STORES ネットショップのフロントエンドエンジニアから社内異動で情シスの世界へ。マネジメントのかたわら、コードを書く情シスとして社内 IT をより良くするために Chat GPT を使った社内アシスタント Bot の実装や、システム開発による運用の自動化に取り組んでいます。X のアカウントは @howdy39

社内システムの構築経験を活かして STORES の情シスに

ITチームのメンバーと中野さん(写真中央)。

──まずは、これまでのキャリアを教えてください。これまでも情シスとしてキャリアを積まれてきたのでしょうか。

いいえ。STORES は4社目で、これまではSIerとしてソフトウェアエンジニアを10年以上やってきました。その中で転職をしたり、フリーランスになったりとはたらき方を変えながらエンジニアを続けてきましたが、事業会社ではたらきたいという気持ちが強くなっていきました。

──それはどうしてなのでしょうか。

SIerでは、何を作っているかも内部情報なので、それを開示することができません。たとえそれがみんなが使っているシステムや大きな企業の社内システムであっても、それに関わっていることすらオープンにできないのはもどかしいものでした。ちょうど30歳を少し過ぎ、自分のキャリアを見つめ直すタイミングで事業会社への転職を決意しました。その中で知ったのが STORES です。STORES(ネットショップ)のフロントエンドエンジニアとして入社しました。

──入社されてからのことを教えてください。フロントエンドエンジニアから情シスに転向したのは、どのようなきっかけでしたか?

フロントエンドエンジニアを1年半ほどやった頃、情シスの採用を始めるという話が社内で持ち上がったのを知りました。当時の STORES は、ごく少人数の組織から一気に規模を拡大している時。私から見ても、入社時に貸与するPCの用意がギリギリのタイミングだったり、社内ITに関わるドキュメントがなかったりと、かなり混沌とした様子であることが伺えました。

一方、それまで多くの社内システムを作ってきた経験を活かし、社内ツールを作ったりして、自らのスキルが STORES の情シスとして活かせそうだという手ごたえを感じてもいました。それならば情シスになったほうが STORES をより成長させられそうだなと、社内異動を申し出て、気づいたら情シスになっていました。

拡大する組織と「マイナスをゼロに」する仕事

──当時の情シスの状況はどんなものだったのでしょうか。

2人のメンバーに対して、組織はどんどん拡大し、そうしている間にも入社してくる方がたくさんいる状態でした。まずは、Slack や Google Workspace の管理画面を開いて、これは変えたほうがよさそうだという設定をひとつひとつ変えていくところから始め、同じ要領で社内ツールのさまざまな設定を点検していきました。

──最初は、マイナスをゼロにすることから始めたんですね。

そうなんですよ。危ない設定をきちんと直したり、これは最低限導入しておかないとまずいシステムを追加したりして、ある程度きれいな状態になるまで1年半くらいかかりました。それから、やっと現在行なっているようなプラスの施策ができるようになったのです。また、これまでの間に STORES にいくつかの会社が仲間入りするたびに、その会社の環境を STORES のものに揃える作業が必要で、それもまた骨が折れました。さらには、社名変更も行ったんですが、私のチームも総動員しましたし一番大変な仕事だったかもしれません。

社名変更と400人のアカウントの大引越し

──heyから STORES に社名が変更され、それに伴って種となるアカウントのメールアドレスが変わり、そしてそれに紐づく全てのシステムのアカウント引越しですよね。

社名変更に伴うこのような環境の移行は、数年かかる会社も珍しくありません。私は当初、この移行を1年ほどで終わらせる計画を上長の(佐俣)奈緒子さんに提案しました。そうしたら「3ヶ月でやろう!みんなで協力してやればできる!」と言われて(笑)。

確かに、新しいアカウントに移行しながら古いアカウントを使い続けていると、かかるコストは2倍です。なるべく早く廃止する必要があることを改めて実感し、そこから社内はもちろん SaaS ベンダーの方にも協力してもらって3ヶ月で移行を完了させました。

──あの移行は本当にスムーズでした。ドキュメントに必要なことが全て書かれていて。

それを目指していたんです。およそ400人分のアカウントの引越しですから、4人中1人から質問が来たら100人の対応をしなければならなくなります。そこで、社内ドキュメントである esa の文章を磨き上げ、それを読んでもらえば9割9分の人ができるだろうというクオリティに仕上げました。この作り込みは、私だけでなくチームメンバーがかなり工夫を凝らしてくれました。

また、裏ではアカウント引越し作業を自動化するコードを書きました。引越し作業をするみんながアカウントの引越しにかかる負荷をなるべく下げるようにしました。メンバーの協力の甲斐あって、およそ400人分のアカウント引越しが無事に終わった時にはほっとしました。

テレビ局さながらのレビュー会の舞台裏

──他にも印象に残っている仕事はありますか?

月に一度の全社総会、通称レビュー会の改善です。コロナ禍以前は、レビュー会はオフィスで行われていました。時間になるとみんなが集まってきて、地べたに座ってモニターを見るというスタイル。それが急にコロナ禍になったことで、オンラインで行わなければならなくなりました。はじめは全員 Google Meet に参加して行っていましたが、音質も画質もよくないですし、スライドめくりに手間取ったりもするので、見ていてよい体験とは言い難いものでした。

──誰かのマイクがオンになっていたりしましたね。

そうそう(笑)。ここでも(佐俣)奈緒子さんから「レビュー会、よくしたいね!」とオーダーをいただいて。手探りの状態から、ちゃんとした機材を使って本格的な配信を行う方法を模索し始めました。

──今は、オープニングにイラストが登場したり、テロップやエンドロールがあったり、テレビ局さながらのクオリティですよね。どのようにして今のレビュー会の状態になったのでしょうか。

まず、配信経験が豊富な業務委託の方にアドバイザーとして入っていただいて、ノウハウを教えていただきました。その方の協力もあって機材が少しずつ揃っていき、オフィスに配信専用スペースが登場し、同時に私たちにもノウハウが溜まっていったのです。何百人ものメンバーの時間をかけるレビュー会のクオリティーが上がり、見ていた方から良いフィードバックが来た時には感慨深いものがありました。

──一番大変だったのは、どんなことでしたか?

うーん......全部大変でした(笑)。強いてひとつあげるなら、機材にかなり悩まされたのを覚えています。ケーブルの長さが足りなかったり、気づいたら断線していたり。はじめの方はぎりぎりの数の機材で配信をしていたので、どれかひとつが壊れるだけで配信事故になってしまうプレッシャーもありました。今は負荷分散や冗長化をしている部分が増えているのでだいぶ安心して配信ができています。

コロナ禍で人に会うのも珍しいような状況で、毎月経営陣が話しているのを間近で聞けるのはいい刺激になりました。配信では伝わらない空気感や、舞台裏を見ていられるのはこの仕事の特権な気がします。

配信がうまくできるインフラが整ってから、今度はコンテンツを良くしてくれるメンバーが入ってくれて、さらに大きな変化が起きました。見ている人を飽きさせない内容や、配信場所を変えるなど、さまざまな工夫を凝らしながら現在のレビュー会ができあがっています。このレビュー会の配信のノウハウを応用して、プロダクトの記者発表や社外の人を招いたオンライン勉強会なども行っています。

──現在では、レビュー会の配信をチームメンバーに任せられるようになったとか。マネジャーになられてみて、変化したことはありますか。

情シス未経験だったメンバーが、情シスとしてどんどん仕事ができるようになってとても頼もしいなと思っています。一方で、マネジャーになった当初は「ハウディさん(ニックネーム)が考えていることがわからない」と言われて悩んだこともありました。それに応えるため、esa に自分の仕事に関する考え方をまとめて社内に共有することで、少しずつ自己開示をしていきました。考えていることをテキストにすることで自分もメンバーも思考が整理されて、やってよかったなと振り返っています。

──「いぬのきもち」という名前で出していたものですね。私も読みました。

チーム外の人に読んでもらって反響をもらえるのも良かったことのひとつですね。

事業に寄り添い、加速させる情シス

──現在情シスが行っている施策は「攻めの情シス」という感じがします。

ユーザーが自分で解決できることが理想で、それをITで実現するのが情シスだと思っています。なんでもかんでも依頼するのは億劫ですし、組織規模が大きくなればなるほど「こんなこと訊いていいのかな」と言い出しづらくなってしまうからです。そのために、まず社内ITのドキュメントをわかりやすく書く。そして、その解決策を自分で導き出せるようにしようとしています。

──というと、どんなものなのでしょうか。

最近では、「tsuna-can」という ChatGPT を利用したアシスタント Bot を作りました。Slack でこれを呼び出して質問を書くと、社内ドキュメントから答えを探してきて答えてくれるというものです。直接訊かなくても解決できる選択肢があれば、土日のサポート時間でも、深夜の障害対応時でも、自分たちで困りごとを解決することができる。なるべく事業のスピードを落とさない状態を作りたいと思っています。

今は社内の困りごとに対して答えを返すものですが、精度を上げていければプロダクトに関するヘルプや、仕様に関する質問など、事業に直接関わることを答えられるものになるはずです。

──今後目指していることはありますか。

もっともっと STORES をはたらきやすい場所にしたいと思います。そのために、困ったことを解決するだけでなく、事業に寄り添うような情シスであれたらいいなと。例えば、社内で何かのプロジェクトを始める時、Slack のチャンネルやユーザーグループを作って、Google Workspace で共有ドライブを作って、esa でドキュメントをつくって......と一定のフローがありますよね。こういった社内ITを使うシーンで、これをセットで自動で作れるようになったら便利なのではないか......とか。自動でこのようなものを提供できたら、もっと事業のスピードが上がるかもしれない。

ずっと同じことをやっていても飽きてしまうし、もったいない。常に新しい技術を触りながら、「これならここに役に立ちそう!」「こんな活用ができるのでは」と想像力をめぐらせる情シスでありたいと思います。

(写真・文:出川 光)

中野さんのお気に入り:pochilu STORE
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