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heyのOriginalを探す旅 / 佐藤裕介

寄稿:佐藤裕介(ヘイ株式会社 代表取締役社長)

E コマース、電子決済分野の素人だったわたしが、E コマース、電子決済事業を運営するスタートアップの CEO になってから3年が経過した。丸腰のわたしを会社のメンバーや顧客、株主など多くのステークホルダーが助けてくれて、事業規模は30倍、メンバー数も10 倍以上となり成長を続けている。3年間いちども会社のnote を書かなかったので3周年にかこつけてこれまで考えていたことをまとめてみたい。(まったくド素人の分野で CEO になったひとが意識してきたこと、という情報にどれくらい価値があるかはわからない。おそらく多くのひとはそんな無謀な転職をすることはない)

強烈なリーダーシップの代わりに

新任 CEO にとって、最初の3ヶ月は最も重要といわれる時だ。あたらしいリーダーの登場は会社が変化するシグナルであり、メンバーもその心づもりができている。変化に寛容なこのタイミングに一気にいろいろなことを進めてしまうことが肝要である。

heyのCEOに着任した時、事前予習をしているとそんな主旨のアドバイスを見かけることが多かった。特にわたしの場合は創業後しばらく時間が経過した会社の筆頭株主となって hey に着任している。本来であれば、わたしの事業に対するビュー、成長ビジョンを共有し、それに向けて会社をトランスフォームさせるプランを提示し力強くリードしていくべきなのだろう。

しかしわたしはその最初の 3ヶ月を、既存の数千のオーナーさんのウェブサイトやSNSのアカウントをながめたり (毎日帰宅後目がかすんでいた)、メンバーと1on1をして仕事やこれまでのキャリアについてを聞いたり、オーナーさんのお店をまわったりして過ごした。

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▲hey スタート直後のデスク。筆者は右。デスクが汚いのは佐俣。

わたしには、なにか素敵なものになりたいという気持ちがあまりない。競争心も、激しい野望のようなものもない方かもしれない。起業家の成分が少なめなのだろう。

heyについても、今とはまったく別の最高のなにかにしたいとは考えなかった。heyの母体となったCoineyやSTORES.jpの中にある、まだちいさいかもしれない光を見つけ取り出して、社会を照らすことのできる太陽にまで大切に育てあげることがわたしの仕事だろうと思った。

だから最初の3ヶ月は強烈なリーダーシップを発揮する代わりに、犬が家の中でおいしいそうな匂いを求めてくんくん嗅ぎまわるように過ごしていたのだ。

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▲筆者のスマホ裏側のステッカー

「Original」を探す旅

「Original」という言葉には、「発端や源になる性質」という意味がある。この3ヶ月でわたしが探そうとしていたものは、この「Original」だった。自分たちの中にある、自分にしかできないもの。


これは、わたしたちが提供するSTORES プラットフォームのブランドスローガン「Go Original」と実はつながっている。

オーナーさんから「自分にしかできないものを提供できるようになったところから、お商売が軌道に乗り始めた」という話を聞くのが大好きだ。これこそがお商売やキャリアの面白いところであり、希望でもあると感じるからだ。これを信じられる世界にしたいし、その実例を増やすことにSTORES プラットフォームが貢献できたらという想いから「Go Original」というスローガンが生まれた。

村上隆さん
世界で唯一の自分を見つけて、そのコアの部分と美術史を相対化し発表すること
引用元: 芸術起業論

誠光社さん
自分に関係のあるものは自分にしかできない。デザイナーさんも友達だし、建築家も飲み屋で仲良くなった人だし、コーヒーも自分の先輩で、他ではこうやって販売とかやらない人だけどやってくれて、自分に近いものができる。それが個人店の醍醐味ですね。
引用元:STORES Magazine
原研哉さん
要はいかにオリジナルであるか、ということが大事。世界に目を向けることは、内側に同じ熱意と意欲で目を向けることと、一対なのだと、かなりの確信とともに思う。
引用元:Twitter
Kimi.さん
Kimi.が初めて出したスマホケース作品。これがずっとずーっと売れ続けてくれたから、私たちはこうして専業作家になれました。そして今、売り上げが落ちてきて、夫婦二人でもう一度考え直した時、この「花とリング」と言うテーマにもっと深くこだわるべきじゃないか、そう気づいたのです。
(中略)Kimi.のブランドとしてのアイコンって何だろう?それを二人で考えたときに出てきた答えがこの「花とリング」でした。私たちをここまで大きくしてくれたお花とリングのスマホケース。だからこのテーマにそぐわない作品を、もう私たちは出すことはないし、今後はずっとこのテーマに寄り添ってKimi.は成長していこう。新しい作品を生み出していこう。そう決めました。
引用元: note

誰にでも、独自の社会の役に立つためアプローチや成功するプロセスがあるはず。着任後の3ヶ月はそんなheyのOriginalを探す旅だった。

heyの中に見つけた、ちいさな光

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みんながどんな気持ちで働いているか。それが製品やオペレーションにどう表出しているか。お客さんはどんなひとたちで、なぜわたしたちのサービスを使ってくださるのか。新任 CEO の一般的なプラクティスとは随分と距離があるが、数えきれないほどオーナーさんのサイトを見たり1on1を重ね、社内をくんくん嗅ぎ回った3ヶ月はあっという間に過ぎた。

そしてついに、そのコアを見つけた。

シンプルで丁寧に取捨選択され、何度も何度も見直されたであろう機能や画面遷移、お問い合わせサポートの顧客満足度、賑わう Slack の顧客フィードバックチャンネル、そして用事があってもなくても、業務中も業務時間外も、オーナーさんのお店に足を運んだり、オンラインストアで買い物をしたりするメンバー。

オーナーさんたちに対する敬意、チャレンジを支援したいという気持ち、彼らからのフィードバックを受け取る謙虚な姿勢が、守るべき、発展させていくべきコアだと気づいたのだ。

製品には足りない機能が無限にあるし、サービス品質、オペレーション品質も改善の余地がありすぎるほどある。ただそれは、一生懸命がんばって作ったり直せばいい。

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一方でこのちいさな光は、わたしがでっちあげることはできないし、命令してできあがるものでもない。何百人、何千人の会社になっても、このコアを大切にし拡げていくことができれば、hey という会社はわたしたち固有の方法で、社会にとって意味のある存在になれる。わたしが毎月の全社レビュー会で念仏のように繰り返し話していることは結局のところ、heyの Original の再確認なのだ。

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hey の資源配分戦略には一部、合理的でない部分がある。その論理的帰結と会社の意思決定のギャップがわたしたちの Go Original で、リスクテイクであると同時に事業競争力や優位性の源泉である。リスクは、果実だ。そしてリスクテイクは、自らの Original に基づいているものこそ納得度の高いチャレンジになるし、成功確度が高いと考えている。

hey をスタートしてから1年半後に、はじめて全社に向けてわたしなりのこの市場、顧客、事業に対するビューと成長ビジョンを発表した。本来、新任CEO が最初の四半期でやるべきことだ。時間がかかったが、会社の Original と、オーナーさんの変化が交差する場所に興味深い機会を発見したと思っている。尊敬する Shopify や BASE、Square、Amazon、Recruit などと、違う山の登り方を選択したのだ。また次の3年がたのしみだ。

追記1:
わたしたちと Original を共有できそうな方はぜひいますぐ、採用ページから連絡してください。お願いします!

追記2:
こたえはいつも自分たちの中にある、という意味の話をこれだけ長々書いておいてなんだが、わたしにも切実な願いがある。ひととして、元気で明るい存在になりたいというものだ。暗くて挙動が不審なので。heyという社名にはその願いを込めて、元気で明るそうな文字列を選んだ。

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heyのnote、通称hey noteは、heyのオープンな社内報です。heyではたらく仲間のこと、みんなが考えていること、オフィスで起こるできごとについて。せっかくそんな話をするなら、みんなに読んでもらったほうが楽しいから作りました。